社員紹介
2021年 キャリア入社
物理システム工学科 量子機能工学専攻 修了
前職では電機メーカーの製造部門で、設備や工程の管理を担当しました。海外工場の立ち上げにも参画し、4年間ほど駐在しました。駐在の中で体感したのは「日本人が普通」ではないこと。例えば、海外では定められた業務以外は全く行わない方もいらっしゃいますが、日本人であれば自分の本務ではなくとも何等かの異常に気付いた際にはそれを上長へ報告してくれる方が多いです。日本でのモノづくりにおいて、設備保全や製品品質維持、これらの多くの部分は日本人ならではの気遣いによって支えられていたことを知りました。
その頃、製造現場で流行っていたのは「IoT」です。IoT技術によって設備や品質のすべてがデータ化されると、日本人ならではの“気遣い”や“匠”の技術も定量化されるデータに含まれるので、日本人らしさが無くとも同じ品質の生産が可能になり、ゆくゆくは日本製造業の強みが失われる可能性があると考えました。また、当時は国内工場における現場改善としてIoT技術を活用していましたが、日々の生産を抱えながら先進情報を掴み、活用するには時間が足りません。「しっかりと腰を据えてIoTに向き合いたい」「日本の製造の独自性を見出して形にしたい」。これからのIoT時代に備え、自分の市場価値を高めるためにも転職を考えるようになりました。
当時、IoT担当やDX担当の募集はそれなりにありましたが、情報システム部や生産技術部の出身者をターゲットにしたものが多かったです。一方で私は、製造現場での経験を生かして現場の困りごとをIoTで解決したいと考えていたので、転職活動は難航しました。
そんな私に声をかけてくれたのがJX金属です。面接にて「JX金属はIoTに関してはまだ発展途上の段階にあります」「今まさに注力して取り組んでいる分野です」と、危機感を持った上でIoT化推進へ強い思いがあることを知りました。この会社でならいろいろなことにチャレンジできそうだと思い、入社を決めました。
私が所属している本社 情報システム部 デジタルイノベーション担当では、新技術や新ツールの探索や評価を行っています。現場でのデータ活用や官能検査の定量化に向けたAI技術、作業者の負担や作業時間を減らすための協働ロボット・画像検査技術、デジタルツイン実現に向けた3Dデータ取得・活用技術、オフィス領域で活用できるRPA・AI技術など、幅広い領域を対象に活動しています。
加えて、JX金属各工場のIoT・AI計画の推進支援も行っています。IoT・AI計画とは、デジタル化をはじめIoT・AI技術を生産工程や事務作業に取り入れ、生産性の向上を目指すものです。この計画のうち、技術的難易度の高い案件や新規性の高い案件については、実証試験として工場メンバーと連携して取り組んでいます。
その中で私は、FA(ファクトリー・オートメーション)に関わる領域のIoT活動を軸として取り組んでいます。FA技術者が使う新技術のAIツールや人作業の代替技術、3Dデータ活用策の検討を進める中で、自働化に関する実証試験を推進しています。その取り組みの一つとして、製造現場のみならず生産開発・オフィス用途でも手軽に使える協働ロボットの評価・検証を行っています。また、これまでの計画・実績を踏まえてスタートする2023年度からのIoT・AI 6カ年計画では、探索してきた新規ツールと実証試験で培った部分最適化・自働化の知見をベースに、会社・工場・事業の全体最適化を検討し、全社横断的に技術を展開してDXの実現に寄与したいと考えています。
IoTやDXと聞くと「魔法の杖」と感じる方がいます。さらに「本社デジタルイノベーション担当です」となると、その道のスペシャリストのように聞こえ、相手からのハードルが上がっていることが多いです。まだまだ私は勉強中の身なので、関係者から相談をもらうたびに自身の未熟さを痛感します。印象としてはビハインドからのスタート。その点が難しいです。一方で、現場の困りごとに寄り添い、自身の製造経験を踏まえた提案を納得してもらえたり、「さすが!」「よくわかってる!」と言ってもらえたりすると非常にやりがいを感じます。
IoTやAI、DXに関連する新技術を扱う部署というのもあると思いますが、情熱を込めた提案に対しては、過去の慣例にとらわれることなく前向きに捉えてくれる文化だと感じます。もちろん施策の開始に向けては、上司や関連部門の方からの審査を受け、質疑やコメントをいただきますが、ほとんどが実行に向けたアドバイスです。また人員や費用の課題があれば、他の案件や他部門と調整するなど解決策を見出すために伴走してくれる人が多いと感じます。
メーカーの製造現場では、ときどき突発的に原因不明の不具合が発生します。この手の不具合は、原因究明しようにもなぜかすぐに元通りになるため再現できません。前職から、この課題を解決するツールや実装方法の構想を進めていました。ツールの選定にあたっては、製造部出身の私からすると敷居が高く、選定するにも何を評価すれば良いのか皆目見当もつかない状態で、前職では相談先もなく断念していました。
JX金属に入社後、この件を再度検討し、社内のデータサイエンティストのアドバイスを得たり、現場データを用いてツールを評価したりと、IoTやAI活用・DXの推進を目的に集められた周囲の仲間の協力を得て、かなり具体的な構想までたどり着きました。今後はこれらの構想を実証試験に結び付け、現場の困りごとの解決につなげていきたいと思っています。